ぼくたちは大人になれなかった、お話
新宿駅の13番ホームから階段を駆け上がり、
東南口の改札へと向かう。
改札を出る。
どうやら雨が降り始めたようだった。
傘を差すほどでもない雨の中、
にわかに浮き足立ったぼくたちは、
吸いたくもないタバコに火をつける。
雨とタバコの匂い、人々の話し声、
客引き防止のアナウンスが一体になって、
自分が新宿にいることを実感させられる。
ぼくにとっての東京とは新宿だった。
渋谷でも原宿でも、もちろん東京でもなく。
この街が、僕にとっての世界の中心だったんだ。